新茶の水色は薄い若葉色、色には出ない甘みと香り
「夏も近づく八十八夜♪~」は、茶摘みの風景を歌ったもので、「八十八夜」は立春から数えて八十八日目に当たります。
この歌を聞くと「新茶」の旬を感じます。そしてちょうど茶摘みは最盛期を迎えます。
「八十八夜」は、二十四節気でいう「立夏」に近く、昔から農作業の夏の準備の目安になってきました。
末広がりの「八」という文字が農民に好まれたために、この時期収穫される新茶は、めでたいものとされました。
また昔から初物は縁起が良く、食べるとその物がもつ栄養と生命力をもらうことで長生きするといわれ重宝されてきました。
お茶は、4月頃から芽が膨らみ始め新芽に成長します。最初の新芽を摘みとってお茶にしたものを「新茶」「一番茶」と呼びます。
ここでは、新茶のさわやかな味わいをうまく引き出す方法と、茶葉の適切な保存方法を紹介します。
入れたてがベスト!お茶の色が変わる前に味わう新茶の魅力
新茶を楽しみに急須に注ぐと、期待しているお茶の色からすると何だか薄いですよね。
色だけみると味がなさそうな気もしますが、そんなことはありません。この“お茶の色(=水色)が薄く淡い黄色”こそ新茶の特徴です。
急須から注がれた直後の湯飲みの中の新茶の色は黄色です。それが時間を置くと、黄緑から茶色に変化していきます。
これは、葉緑素(クロロフィル)が水に溶けて黄緑色になり、それが酸化して茶色に変化するからです。
摘んできたばかりの茶葉でも、そのままにしておくと酸化が進み、ウーロン茶や紅茶のように茶色い茶葉になってしまいます。
そこで、酸化を止めるために「蒸し」という工程が行われます。この工程が強く長いほどお茶は粉っぽくなります。
急須からお茶を注ぐと、粉とお湯が混ざって葉緑素が湯に溶けだし鮮やかな緑色になります。
逆に高級な手もみの茶葉は、葉を糸状にもんで酸化を防いでいるのであまり長く「蒸し」を行いません。そのため高級茶は、やや黄色味が勝っているといわれます。
特に新茶となる一番茶は柔らかいため蒸しの時間が短かい浅蒸しのため、色が薄くなります。
新茶の若葉のさわやかな香りは、青葉アルコールという成分に由来します。
この成分は、お湯による抽出でしか味わえません。お湯の温度は80度ぐらい、茶柱が立つ温度が最適です。
おいしい新茶の入れ方
- 茶葉を急須に入れる。(ティースプーン2杯/1人を目安に)
- お湯を湯のみに入れて湯のみを温める
- お湯を注ぐ(お湯の温度:70~80度)
- 約40秒ほどで抽出・・・茶葉が開く
- 均等に注ぎ分ける
※美味しく味わうためには、最後の一滴まで残さず急須から絞り切ってください。
最後の一滴まで新茶のエキスとうま味が詰まっています。
新茶の若葉色を保つための保存方法
新茶は、長期保存が難しいといわれます。新鮮な色や香りがたちまち失われるからです。
大事に取っておくよりも、早めに飲み切るようにしてください。
しかし、できるだけ長く新茶を楽しみたいものです。そのために、以下に適切な保存方法を示しました。
- 新茶を購入したら保存のために直ちに行うこと
①1回分ずつに小分けする・・・密閉できる小袋に入れる
②さらに、それらの小袋を密閉容器に入れる - 冷蔵保存
お茶は、温度や湿度の影響を受けやすく、匂いを吸着する性質があります。また、光による変質も顕著です。これらを避けるため、冷蔵保存をお薦めします。
日々使用する新茶は小分けして封をし茶缶に入れたら、冷暗所に保管します。封を開けたものは、できるだけ早くの飲み切ってください。 - 冷凍保存
さらに長期保存したい場合は、小分けにして密封し冷凍保存します。しかし、新茶は鮮度が命です。早めに消費することを心がけましょう。
※冷蔵庫から出して使用する場合
冷凍保存でも冷蔵保存でも、暖かい部屋へ急に出して開封すると、結露が発生して茶葉が吸湿する恐れがあります。
冷蔵庫から涼しい場所へまず出し、徐々に常温に戻すとよいでしょう。前日に翌日使用する分量を出して、一晩かけてゆっくり室温に戻しましょう。
新茶とお茶の色の関係についてのまとめ
「八十八夜」は「米」という字を連想させ、これは「米寿」に通じると考えられてきました。
それは、長生きの象徴であり、お茶が、元もと薬として日本に入って来たことに由来します。
茶は、奈良時代には貴族の間で薬として飲まれたとされますが、大変貴重なものでした。
近年の研究では、茶葉に含まれるカテキンは抗アレルギー成分であり、フラボノールは抗がん作用があるとされます。
その他にも、お茶には有用な成分が含まれることが報告されています。この時期、生命力あふれる新茶を楽しんで、ますます健康になりましょう。